
堺でもかつて導入が予定されたLRT。ライトレール・トランジット(軽鉄軌道交通システム)の省略形で日本では次世代型路面電車と訳されます。宇都宮や富山ではライトレールと称されることでほぼ定着しています。低床電車をLRTと呼ぶのは誤りで低床車両を指す場合はLRVと言わなければなりません。
諸外国にも目を転ずるとLRTといっても、国によってさまざまな異なる種類の軌道系交通を指しています。
もともとLRTは1970年代米国で都市交通改善のため、1世紀以上前に米国で栄華を極めたインターアーバン(都市間電気鉄道)の都市近郊部を復活させた都市鉄道の一種です。特徴として都心部は路面をゆっくりと、郊外は専用線路を高速で走ります。路面電車を指すストリートカーやインターアーバンという用語は、1970年当時陳腐化していて米国人の感覚に響かないため、アムトラックなどの鉄道よりライトで軽快な鉄軌道の新しい交通モードの名称としてつけられたものです。かつて米国大都市の高架鉄道を「エル」と呼ぶ場合がありますがこれはelevatedの略でLRTとは関係ありません。
こうしたことから、LRTという呼び名は米国以外では必ずしも一般的でありません。米国でもそれぞれの都市で命名されたメトロレールなどの愛称が使われています。ヨーロッパでは在来型も次世代型も総じて「トラム」または「ライトレール」です。ドイツではトラムはシュトラッセンバーン、ライトレールはシュタットバーンと呼ぶことが多いようです。
アジアでLRTと言えばフィリピンの軽量高架鉄道(1号線)の名称であるほか、シンガポールの新交通、インドネシア、マレーシアでも軽量高架鉄道が「LRT」と呼ばれていて、いずれも路面を走ることはありません。中国語圏では路面電車はLRTを含め「有軌電車」となりますがそのように読んでいるのは中国(大陸)だけです。ライトレールの中国語訳は「軽軌」ですが、中国と台湾では意味が違っており中国では都市電鉄(日本の大都市近郊私鉄網おようなもの)のことになります。台湾では「軽軌」は正にライトレール、トラムのことで逆に決して有軌電車とは言いません。香港では有名な二階建て電車は単に「電車」、新界の新しいライトレールは「軽鉄」です。これらはニュースなどでしばしば誤訳がされ、知らないと大いに戸惑います。
なお、最近LRT建設が進んでいる韓国では、LRTとは呼ばず路面電車またはトラムと呼ばれています