
現在、阪堺電車のモ351形4両に60年記念ヘッドマークが装着されています。
ヘッドマークはオレンジ系とブルー系の2種、デザインは一緒で大阪方と浜寺方とで違う色のものが付けられています。
この351形は現在4両が活躍中ですが、1962(昭和37)年に2両と1963(昭和38)年に3両計5両が鳳にあった帝国車両で製造されました。
実は351形登場の5年前、1957(昭和32)年に、見た目は351形と同じモ501形という当時の技術の粋を集めた高性能車が生まれていたのですが、5年の間に日本、特に大阪で、路面電車は交通渋滞の原因で都市の邪魔者だとのレッテルが貼られてしまいました。新車両を導入するにあたり501形は贅沢すぎということで簡素化され安上がりなものを作ることとなり、車体は501形と同じですが旧車の部品を使って製造されたのが351形でした。とは言ってもお客さんの目に触れるところは全くの新車で路面電車では珍しい空気ばね台車のおかげで乗り心地も申し分なくお客さんの評判も非常にいいものでした。
351形が製造された1958(昭和38)年は、折しも大阪市電の大幹線であった南北線が廃止された年で、このようなスペックの車両が登場するのはちょっと驚きでした。
皮肉なことかもしれませんが、その後の日本路面電車界の衰退、技術レベルの停滞・退化もあり、性能や取扱いが在来車と一緒というのは現場では歓迎されました。
誕生以来60年にわたり大活躍し、ワンマン化や冷暖房取り付けなどの改造を経て現在に至っています。モーターなどはモ161形と同じ旧性能のもので走行時は重々しい音を奏でます。末永い活躍を祈りたいものです。