広島の広島電鉄は、日本路面電車界のリーディング・カンパニーです。東証プライム上場の大企業でもあります。その広島電鉄が中期経営計画を発表しました。電車部門では停留場の整理統合、平和大通りの新線、電車優先信号などなど攻めの姿勢が目立ちます。実は、これらはかなり以前から計画に挙げられていたのですが、改めて声高に発表するのは、大計画の一つの広島駅前短絡線が実現し、注目を浴び高評価がされている今、より大きなインパクトを狙ったものでしょう。
大くくりの目標は、スピードアップのようです。路面電車はノロいという下馬評をどうにか打破したいとして、具体策として最高速度の向上のほか、先に挙げた停留場の整理統合、平和大通りの新線、電車優先信号などを挙げています。今現在進行中の運賃収受の新システム、モビリーデイズ導入による運賃チェックの合理化は、日本の交通事業者にとり永遠の課題と言われた、乗客は厳密な管理をしないとみんなタダ乗りする、との考えを修正するきっかけの一つになるかもしれません。従来、運転士や車掌が安全確認以外に加えて乗客一人ひとりの運賃支払いをチェックしなければならないため、大型の車両では車掌乗務が必須でしたが、広島では種々の対策により30m級車両のワンマン運転も試行されています。
(左)1998年建設省が作製した政策パンフ (右)この大型車両もワンマン化へ
1990年代後半、欧米の都市交通の成功例を参考に次世代型路面電車ともいわれるLRTが認知され、国の路面電車政策が縮小淘汰から育成へ大きく見直されました。以降現在まで約30年間にわたり復権、ルネッサンス、逆襲などなどいろいろな表現で路面電車を持ち上げあるいは応援する動きがありましたが、現実は、掛け声だけが先行、規制緩和と核心的な進歩・発展は緩慢でした。その間、諸外国では技術がどんどん進歩し、30年前は米国相手にそこそこあった日本製路面電車の輸出もほぼなくなりました。途上国と言われた国々の追い上げもあり、国内のレベルがハードもソフトも博物館並みにとどまり対外競争力は消失してしまっています。
日本では路面電車は、基本となる法律「軌道法」が制定された大正時代の技術レベル・社会感覚で制定されています。日本人が路面電車を見るイメージは、時代遅れと見下し、アカンものとの決めつけがあります。法や制度といったソフト面においても、また車両や施設といったハード面も製造する側と実際に使用する側双方の技術レベルは、いずれもさび付いている状況です。
リーディング・カンパニーであり、今、勢いがある広島電鉄のチャレンジは広島のみならず国内路面電車の進歩の頭を押さえつけ続けてきた多くのバリアに風穴を開けるのではと期待するところです。日本の路面電車、LRTと言う、朽ちている産業分野の再興に繋がる可能性も十分にあります。応援したいと思います。


