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公共交通維持のため負担増OK?

運賃値上げ、交通税許容の傾向
2022年12月17日 日本経済新聞朝刊から転載

最近、日本経済新聞が行った、ローカル鉄道維持に、運賃負担増や交通税導入への全国意識調査の結果と分析がまとめられ紙面に発表掲載されました。ローカル鉄道利用者を対象にしていて、その多く、平均で85%の調査対象者が維持のためには運賃値上げを容認するとのこと。

さらに17日朝刊には関西のローカル私鉄11社の利用者での結果も紹介されていましたが、うち6社の利用者は、全国平均を超える9割超が値上げを容認するという結果だったそうです。交通税の導入については、状況が厳しい近江鉄道や事実上県営に近い信楽高原鉄道を抱え、すでに県レベルで交通税が議論されている滋賀県では容認派が多い結果でした。

一方、都会部に路線を持ち大手私鉄系の阪堺電車、神戸電鉄では値上げ、交通税とも容認派は半分程度となっています。もともと運賃が高く、もしなくなっても他の公共交通で代替できるだろうということが大きな理由かもしれません。よく似た環境にあるものの、観光客の利用が多い京福嵐山線では運賃値上げには肯定的ですが、交通税は半分程度しか肯定的な人はいませんでした。

調査対象を利用者だけから一般府県民に広げると、新たな税負担をしてまで公共交通を残す必要なし、車があるじゃないかという声が大勢になってしまうのではないでしょうか。しかし、現在では交通事業単独でペイすることはまずなく、兼業で埋め合わせているのが実状で、事業者の努力だけでは公共交通を望ましい姿で維持することは困難になっている。

自治体など公的機関が地域の交通のフレームを策定・確保し、運行は事業者に任せるという方式は、運賃収入だけで経営が成立しないことが常識の欧米ではごく一般的なものです。日本においても公共交通は社会の公共サービスとして必要だ、というコンセンサスの形成を急がなければならないのではないでしょうか。その上で有効と思われる方策は積極的に導入し、ノウハウを積み上げることが必要でしょう。

忘れてはいけないのはローカル線や弱小鉄軌道、バスだけの問題でなく、近い将来これまで盤石と思われてきた大都市部の鉄道・バスも維持が難しくなるところが続出するのではと危惧されます。すでにバスは私の住む都市部でも減便や路線廃止が相次いでいて手軽な足とは言えなくなってきました。(の)